「もう、どこにも行かないで」

「もう大丈夫だよ。消えない」

 笑顔の嶋原君は私の髪の毛をワシャワシャ掻くと、歯を見せて笑顔を向けた。

「希花って呼んでいい?」

「もちろん」

「キカって、どんな漢字なの?」

「希望の希に、お花の花」

「いい名前だね」

 いつかも言われた言葉を思い出しながら、私達は夕空に照らされながら、初めて手探りで柔らかに抱き合った。