「あ……」

 それは、もう随分前、二人で撮った写真だった。

 雨の降るバス停、薄暗い写真だが、私も今でも大事に取っている。

「この写真、覚えてる?」

「うん、はっきり覚えてるよ」

「そっか。俺は……覚えてない」

 嶋原君は画面を見つめて目を伏せたのだが、すぐに顔を上げると、私の頬に手を当てる。

「でも、自分が忘れても、恵口は覚えていてくれて、ずっと俺を待っていてくれた」

 ドキドキ、胸が高鳴るが、じっと見てくる嶋原君から目が逸らせない。

「恵口のことをもっと知りたい」

「……嶋原君」

「恵口が他の奴と付き合うのが嫌って気持ちが……正直ある。こんな自分なのに、もっと見てほしいって、思ってしまう」