「え、大丈……」
すぐに近寄ろうとしたものの、恵口は顔を真っ赤にしたまま立ち上がり、平気なフリをしたのだが……ポタリ、タラタラ。
鼻から血が出てきてしまい、辺りが騒然とする。
「うわぁっ、恵口さん、血! 血、出てる!」
「へっ」
塩見が騒ぎ始め、鼻に手を当て血を確認した恵口も慌てるばかり。
「麦野先生、恵口さんが怪我してます」
冷静に麦野を呼んだ石黒が、俺の背中を恵口の方に押してくる。
「嶋原のせいで怪我したんじゃん。一緒に保健室行ってきな」
恵口が麦野からすぐに保健室に行くように言われると、一人体育館を出て行こうとするから、急いで麦野に事情を説明し、自分も恵口を追う。
「ごめん、大丈夫だった?」
廊下を出てすぐに恵口の背中を捉え、横に行くとビクッと肩を震わせられる。
「そんなに驚かなくても」
「……ごめん」
「いや、謝るのはこっち」
「……私は大丈夫」