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ただ、博士が手術を発表した後にも、雨の街が戻ることはなかった。
八月、九月、十月……。
お盆に帰郷した時に博士に会って、希望を持ったものの、更に一ヶ月、二ヶ月……。
大学二年でのクリスマスは、塩見君を含む仲間で過ごして、あっという間に年末。
まだ続けている洋菓子店でのアルバイトを終えると、私は雨の降らないA街へと帰省した。
「希花ちゃん、久しぶりね」
「よく帰って来たね。待っていたよ」
「おじさん、おばさん、ただいま」
私はお盆ぶりに恵口家に帰ってくると、久しぶりに入った自室のベットに、ゴロンッと寝転がった。
懐かしい匂いがして、高校の時を思い出す。