もう戻ることは出来ない、私は、次のステップへと進むんだ。

「希花ちゃん、帰らないの?」

「私、ちょっと寄って帰る所があるので、先に帰っていて下さい」

 おばさんに断りを入れると、私はもう何度も足を運んだことのある、嶋原研究所へと向かった。

 嶋原君のことを特に強く想って、心が動揺を見せる時、研究所は嶋原君を感じることができて、逃げるように出向いていたのだ。

 変わらず、研究所の壁にはラクガキがされたまま。

 インターホンを押して暫くして出てきた博士は、私の姿を見ると、中に招き入れてくれた。

「恵口さん、よく来てくれたね」

「今日、学校の卒業式だったんです」

「そうか、もうそんな時期だったね」