ここまで後ろ向きになっている慎吾を見るのは初めてで、かける言葉を迷う。
「嶋原君、いる?」
一方で、慎吾と入れ違いで入って来た毛利は、手を振って薄く笑う。
「暇だから、遊びに来ちゃった」
「ここにいても、特にすることないもんね」
「今日で七ヶ月半だよ。嶋原君はここにいる間は、まだあっちの世界の友達の記憶はあるんだよね?」
「うん、覚えてるよ」
──そう、覚えている。
塩見のことも、石黒のことも、恵口のことも、ちゃんと覚えてる。
この世界から再び元の世界に戻る瞬間まで、俺の記憶は消えない。
「忘れたくない人って、いるの?」
「そりゃ、いつも一緒にいる友達のことは、忘れたくないよ」
声をかけてくれた三人に、俺のことを馬鹿にするな、と庇ってくれた恵口。
本当に嬉しかったし、恵口のこと、もっと知りたいと思っていた。