施設の先生は優しいし、私を気にかけてくれる、友達のような存在の子もいた。

 それでも、過去をクリアにすることは出来ず、私は内心施設に行くことに、複雑な思いがあった。

 変わったね、と言われるか、変わってない、と言われるか。

 深呼吸して、いつも通りにしていればいいんだ。

 そう、言い聞かせながら、境界線を超えようとした瞬間だった──

 ピーッという大きなクラクションの音が右方から聞こえてきて、視線を向けた矢先に、ドンッととても大きな衝撃を受けた。

 赤信号なのに突進してきた黒い軽自動車が、私達の乗る車体の前方にぶつかって、ぐるぐる円を描く。

 その後にウー、ウー、と数台のパトカーがサイレンを鳴らして追いかけてきて、警察官が相手の車に駆け寄った。

 突然の出来事に茫然としている中、ハッとして、運転席と助手席に座るおじさんとおばさんの肩を揺らすと……。