「お誕生日知ったの昨日だったから、プレゼントは用意できてなくて。ごめんね」


「いや、十分だろ」


 そう答えながらもひたすらにケーキを食べる藤宮くん。


「ふー、美味しかった!上手に作れてよかった」


 私がご馳走様~、とお皿にテーブルを戻していると、「佐藤」と呼びかけられた。


「うん?」


 隣を向くと、藤宮くんの顔がやけに近くて、私の心臓は途端に騒ぎ出す。


「え、えっとな、なに?」


 私は視線を逸らした。


 それでも彼が私の頬に手を当てるので、強制的に視界は藤宮くんでいっぱいになった。


 反射的にぎゅっと目を瞑る。


 心臓がうるさいくらいに高鳴っていて、苦しく感じてきた。


 すると藤宮くんが、ふっと笑った。そして私の頬をぐいっと触る。


 私は訳が分からず目を白黒させた。


「クリーム、付いてたから取っただけだけど?」


「え、あ、クリーム!」


 なんだ!ケーキのクリームが頬に付いてただけか!びっくりしたぁ、てっきり、


「キスされると思った?」


「ひぃぇっ」


 藤宮くんの発言に変な声を出してしまったところで、彼が笑い出した。


「なんだその声」


「だって…」


 藤宮くんがドキドキさせるようなこと言うから。


 彼が笑ってくれるのが嬉しくて、私も一緒に笑った。


「してもいいなら、するけど」


「え?」


 話はもう終わったとばかり思って油断していた私に、藤宮くんはまた顔を近付ける。


「え、えっと…」


 心臓がまた動悸でおかしくなりそうなほどドキドキ言い出した。


 私は思わずまた目を瞑ってしまった。


 藤宮くんが息をのんだ気がした。


 すると、