「お待たせ!藤宮くん、お誕生日おめでとう!」


 そうお祝いしながら、部屋の中央に置かれたテーブルにゆっくりケーキを置いた。


 そのケーキをまじまじと眺める藤宮くん。


「ろうそくも持ってきたよ!火つける?」


「いや、いい」


「そっか」


 私ばかりはしゃぎすぎかな?と少し恥ずかしくなっていると、ケーキを眺めていた藤宮くんが口を開く。


「このケーキ、佐藤が作ったのか?」


「うん、そうだよ。お口に合うかわからないけど…食べて食べて!」


 ケーキを切り分け、取り皿に乗せる。それを藤宮くんの前に置いた。


「お誕生日おめでとう!召し上がれ!」


 今日は何度口にしたかわからないお誕生日おめでとうだけれど、せっかくのお誕生日なのだ、何十回でもお祝いしたい。


 藤宮くんは少し照れくさそうにケーキを一口分切り分けた。


 口に運びかけたフォークを、彼はまたお皿に置いてしまった。


「藤宮くん?」


 藤宮くんはいつものように少しからったような表情を見せる。


「佐藤が食べさせて」


「え?」


「俺も佐藤にケーキ食べさせてあげたこと、あるだろ」


「そ、そんなことあったかなぁ?」


 急な藤宮くんの提案に戸惑いながらも、必死に思い出す。


「あ!去年カフェで勉強した時のこと!?あれ、結局私は食べさせてもらえなかったよね?」


「そうだったか?」


「もう!」


と言いながらも、今日はお誕生日だ。藤宮くんがそうしてほしいなら、ちょっと、いやかなり恥ずかしいけれど、やってあげたい。


 私は少しの勇気を振り絞って、ケーキの乗ったフォークを彼に差し出した。


「ええと、じゃあ、はい、あーん」


 私が本当にやるとは思わなかったのか、自分で言い出したくせに彼は目を丸くしていた。しかしその後すぐに差し出したフォークにぱくっと食いつく。


「うまい」


「よ、よかった!私も、一緒に食べちゃお~」


 そう恥ずかしさを誤魔化しながら、自分の分を慌てて口に入れる。


 うん!ちゃんと美味しくできてる!よかった。


 藤宮くんもぱくぱくと食べてくれてる。喜んでくれてるみたい。甘いもの、ほんとにすきなんだねぇ。