よし! ラルフ様の秘密は絶対に漏らさないぞ! と意気込みつつサロンへと向かいました。
「あらぁ…………」
「まぁぁ…………」
侍女のおふたりかが何故か憐憫なお顔でラルフ様の肩を撫でていました。
ラルフ様はガックリと首を項垂れさせています。
「あ、あのぉ?」
「……こちらに」
グイッと腰を引かれ、三人掛けのソファに密着して座わることになりました。何故に?
あのー、三人掛けなのでもう少し離れて……あ、はい。このままですね。あ、はい。
ということで、密着して座るようです。
「イレーナ、何か勘違いをしているようだが、私は君を逃すつもりはない」
「…………えっと……必ずや沈黙を守りますので」
「違う! っ、私は君をす…………す………………」
――――す?
「……す」
「す?」
「す…………くそっ! ……君を娶りたい」
「あ、いえ、大丈夫です」
傷物にされたとかの責任はラルフ様にないです。
それに、まだ数日しか経ってないせいなのか、未だに男性を見ると心臓が止まりそうなほどに怖いですが、この前のように過呼吸には陥りませんでした。
きっとこれは一過性のものです。
「…………」
ラルフ様が何故か両手で顔を抑えて、天を仰がれています。
一体どういった感情なのでしょうか。
先程から何故何故何故ばかりです。
暫くしてラルフ様が俯きゆっくりと深呼吸を始められました。
「……ふぅ。イレーナ」
とても真剣なお顔で見つめられました。
空色の瞳が艶めいています。少し潤んでいるような気さえします。
頬は薄桃に色付き、何だかお熱があるような?
ラルフ様の額にそっと手を伸ばしましたら、手首をガシリと掴まれ、ソファに押し倒されてしまいました。
「ほはぁぁぁ?」
「イレーナ」
重低音で名前を呼ばれ、背中と腰がゾクリとしました。
「ふぁい」
「イレーナ」
熱っぽい眼差しで名前を呼ばれると変な気分になってしまいます。
ちょっとそういった思わせぶりな態度やめてほしいです。
「君は、全く受け取ってくれないな」
「へ?」
「好きだ」
「……誰を?」
「君を」
――――私を?
「誰が?」
「私が」
――――ラルフ様が?
「え? 呪いがまだ解けて無いっ⁉」
「……」
あら? ラルフ様のお顔がどんどんと剣呑なものに。
「君、鈍臭いと言われるだろう?」
「ええ、まぁ」
よく言われますし、実感もしておりますが、何故にこのタイミングで言われるのでしょうか。
ラルフ様をじっと見上げました。
「……ハァ。男に押し倒されているこの状況で、その顔は駄目だと覚えなさい」
「へ?」
「イレーナ、私は君が好きだ。他の令嬢たちにはなかった、君の前向きさに惹かれている。君を守りたいと思った。一生をかけて」
甘い微笑み。
甘く潤む瞳。
甘く降ってくる吐息。
近付いてくる。ラルフ様のお顔が。
柔らかく触れる唇。
「んっ」
「好きだ」
「っ……」
「イレーナ。好きだ」
「ん…………」
「ほら、唇を開けて。もっと深くキスをしよう?」
気付いたら、ラルフ様に告白され、溺れるようなキスをされていました。