「千紗の血を狙うアホどもが、バカみてえにいるから」

 背筋が凍った。


 あの日みたいに、吸血鬼に襲われるってこと?

 下手をしたら、レオ以外の吸血鬼に血を吸われると?


「……そんなの、イヤ」

 レオはなぜか、嬉しそうだ。

 私はその反応が気に入らなくて、レオに背を向ける。

「安心しろ。他の奴らには絶対、千紗に触れさせねえから」

 レオの力強い言葉に本当に安心して、私はそのまま眠ってしまった。



 朝、目が覚めると、部屋の外で誰かが活動している音が聞こえた。

 レオがなにかしているのかと思ったけど、それにしては足音が忙しい。

 私はゆっくりとベッドから降りて、ドアを開ける。

 活動していたのは、お母さんだ。

 久しぶりに見たけど、相変わらず忙しそうだ。

「おはよう、お母さん」

 私が声をかけると、お母さんは私の存在を認知した。

「起きてたのね。そうだ、これしばらくの食費」

 お母さんは挨拶もなく、私に一万円札を渡してくる。

「じゃあね」

 そして、そのまま仕事に行ってしまった。


 この一枚の紙切れが存在するせいで、私は一人なのかもしれないと思うと、破りたくなる。

「千紗、今日は起きるの早くねえか」