そしてレオは私を軽々と抱えた。

 お姫様抱っこなんて甘いものではなく、俵を担ぐような抱え方。

「ちょっと、どこに行く気」
「姫の家」

 レオは膝を曲げ、塀、屋根、電柱と高い建物を次々と飛び移って行く。

 当然見たことのない景色に、目を奪われる。


 暗闇の中で見る家の灯りがこんなにも綺麗だなんて、知らなかった。


「ほい、到着」

 レオは私の案内なしで、私の家に着いた。

 もう、どうして知っているのかは聞かないでおこう。


 ただ、暖かい灯りを見た後だからか、一つも灯りが付いていない我が家が、酷く冷たく見えた。

 慣れていたからなんとも思っていなかったけれど、初めて、私はこの家に帰りたくないと思ってしまった。

「入んねえの? 家違ったか?」
「……ううん、あってる」

 私はカバンから鍵を取り出し、玄関のドアを開ける。

 当然、静寂に支配された室内。

 私は誰にも迎えられない。

「こんなに広いのに、誰もいねえのか」

 レオの言葉は、私の心を抉った。

 この感情はきっと、吸血鬼には理解できない。

 私は当たり前のように家に入ってきたレオを置いて、寝室に向かう。

「どこまで着いてくる気?」