なんだか、複雑だ。


「姫が死んだら、俺も一緒に死ぬだけだ」


 そのもやもやした黒い気持ちを吹き飛ばすには、十分すぎる発言だ。

 これだけ言われては、断れない。

「……わかった、契約する。ただし、一つだけお願いがある」

 私の言葉で喜んだり悩んだり、レオを見ているだけで癒される。

 本当、私の中でレオは特別な存在になっているらしい。

「私、姫呼びはイヤなの」

 昨日も言った、私のわがまま。

 レオは思い出したようで、微笑んだ。

「そうだったな。千紗」

 レオに名前を呼ばれ、昨日よりももっと、喜びが溢れてしまう。

 レオが呼んでくれるだけで、私の名前が特別なものになったみたいだ。


 そして私たちは契約を結ぶ。

 昨日よりも深く、レオの歯が刺さる。

 痛みのあまり、レオの頭を強く抱き締めてしまう。


「僕、契約の瞬間って初めて見たけど、人種を超えた愛って感じがしていいね」
「おめでたい頭ね。あの二人の結末は、共依存からの共倒れよ」
「……エミリちゃん、知ってて提案したね?」


 横で繰り広げられる会話も、まともに頭に入ってこない。

「俺だけの千紗。一生、離さない」

 ゆっくりと眠りの世界に入っていく途中、そんな恐ろしい言葉が聞こえた。

 けれど、ずっとレオといられるなら、悪くないかも、なんて少しだけ思った。