「あんなに本気でシンを殺そうとするレオを見たら、レオの言うことが本当だって思うしかないじゃない」

 頬を膨らませるエミリは、その容姿もあって可愛らしい。

 エミリが縄を解いてくれたことで、私の身体は自由に動く。

 私が立ち上がると、エミリは手首を掴んだ。

「待ちなさい。今、二人に……いえ、レオに近づくのは自殺行為よ」

 あれだけ私に憎悪を向けてきたのが、嘘みたいだ。

「心配してくれてありがとう。でも、今止めないと、レオは後悔すると思うから」

 エミリは躊躇いながらも、手を離してくれた。

 レオはずっと、一方的にシンを痛めつけている。

「レオ、ストップ」

 そんな暴走を続けるレオの背中に触れる。

 レオは私の手を振りほどくように、振り向いた。

「姫を攫い、傷つけようとした奴を、許せと言うのか」

 気が収まらないようで、レオは私に対しても、少し声を荒げた。

 私を映す瞳には、怒りが見える。

「……悪い、言いすぎた」

 レオはそっぽを向いてしまった。

 そんなレオの頬に触れ、私のほうに向ける。

 当たり前だけど、納得できないという顔だ。


 私のために、これだけ感情を動かしてくれる存在がいる。

 それがなによりも嬉しくて、私はレオの唇に自分の唇を触れさせた。