「レオ君の餌、みっけ」

 私が、男が侵入してきたと判断するよりも先に、そんな発言が聞こえた。

 レオの知り合いらしい。

 だけど、雰囲気的にレオに会いに来たわけではなさそうだ。


『千紗の血を狙うアホども』


 この男もそうなのか。

 私はレオに助けを求めようとしたけど、奴に気絶させられ、それはできなかった。



 家中に響いた音に驚き、俺は真っ先に姫の部屋に行く。

 朝日が昇っている中、活動するとは思えない存在が、そこにいる。

「やあ、レオ君。元気だったかい?」

 昔馴染みと、昔馴染みに抱えられる姫。

 気絶させられ、姫は奴の首元に顔を預けている。


 なんだ、この面白くねえ状況は。


「まさかお前が一番に姫を狙いにくるとはな……シン」

 シンは驚きをあらわにする。

「ウソでしょ、レオ君。この雌、餌じゃないの?」
「あ? ふざけんな、そんなわけねえだろ。姫を返せ」

 本当ならシンを殴ってでも姫を取り返したいところだが、これ以上姫の家を壊すわけにはいかない。

 俺はただ、シンを睨むことしかできない。

「そっかあ。レオ君、ついに姫、見つけちゃったかあ。これはエミリちゃんが荒れちゃうね」

 シンは悪巧みを思いついたように笑う。

「僕たちは先に行ってるよ、レオ君」

 そしてシンは入ってきたであろう窓から、姫を連れて出ていってしまった。