「ってことで、俺は本当にヴァンパイアなんだよ。
そして俺は普通に人間でもある。
夏菜子に一目ぼれした、ヴァンパイアの血を受け継いだだけの人間さ」
そう言って、藍は保険医の手を振り切って、夏菜子の頬に口づけをした。
「―――……!?」
「大丈夫、血は吸ってないよ。夏菜子が貧血をおこしちゃうなら血を吸うのは我慢するよ。
興奮した時は吸っちゃうかもしれないけどね」
夏菜子は恥ずかしさと理解できない状況に置かれたことで、布団で顔を半分隠してしまう。
「そうだ、ヴァンパイアのことでもうひとつ教えてあげるわ」
そう言って先生は藍の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「ヴァンパイアって言うのはとても一途。
愛情や気持ちを隠せない生き物だからこの感情は先生にも止めることは出来ないのよね」
そう言うと藍は夏菜子の横に寝転がり、抱きしめる。
『えっ!? 何!?』
「……ちょっ! ちょっと! 何するのよ!?」
「大好きなんだ。夏菜子が大好きになってしまった。
僕の恋人になってくれ」
人のお願いを拒否できない夏菜子。
しかし、今回のことに関しては簡単に『はい』と言うわけにはいかない。
「じゃぁ、まずはお友達から……」
「そうだね! 友達から恋人に進展する過程を楽しもうか」
もう、夏菜子に夢中な藍だった。