右手は夏菜子のあごへ、左手は夏菜子の右肩へ。


「緊張してる? 敬語なのは緊張してるから? そんなところも凄く可愛い」





 そしてどんどん藍の顔が夏菜子の顔に近付いてきて……。





「おいおい、転入早々問題を起こさないでくれよ!」

担任の焦る声が聞こえてくる。




 そんな声も気にせずに、藍の唇は夏菜子の唇に……――!?




 ではなく、首元に!!




「え? 何? ちょっと待って、何するのよ!?」


藍の顔を避けようと手を動かしたものの……。





「動かないで」

「待て待て、動かないでじゃない」

 担任が走り寄ってくる音が聞こえてくる。





 藍の唇は、夏菜子の首元に触れ、その首の皮膚は藍の口に吸い込まれて行って―――……。





「美味しい。ありがとう」




 そう言うと藍は顔と左手を離して夏菜子の頭を撫でた。

 一瞬だった。




 担任が藍を夏菜子から引きはがす。

「駄目だって言ったじゃないか……止められないのかもしれないが以後やめなさい」



 クラス中がまた騒々しくなる。

「血を吸ったの?」

「本当に血を? ヴァンパイアだ!」

「俺も吸われるの?」

「えーー!? あたしも吸ってもらいたい!!」


 教室内は大パニックで、大盛り上がりだ。




 当の夏菜子はもう失神寸前。