渡邉は夏菜子と藍を交互に見て、不満そうな顔をする。


「夏菜子に同じことを言ったらしいけど、俺は何があっても動じないから」


 夏菜子に抱き着いたまま藍は彩に宣言する。


「わ、私も気にしないんだから!」


 そう言いながらも、心臓はバクバクしている。


「なによ、この数日間怯えていたのに、説得力が無いわね。何があっても知らないんだから」



 捨て台詞を吐くように彩は自席へと移動していった。




「このあと、何が起こるんだろう……。

 変な噂とか拡げられたりしたら、私学校に来れなくなっちゃうかもしれない……」


 藍は優しく夏菜子の頭を撫でる。




「大丈夫。絶対に俺が守るから。

 夏菜子のおじいちゃんも言ってただろ、ヴァンパイアの愛情に勝てる嫉妬は無いって」





 動きが見えたのは、お昼のお弁当を食べ終わった後の事だった。



「ねえねぇ、二人ってもうやることヤったって聞いたけど本当?」

「違うよ、妊娠してるんだよ。学校退学するんでしょ?」

「もう退学する日が決まってるって聞いたけど、二人とも退学して結婚でもするの?」



 怒涛のように質問が流れ込んでくる。



「違うよ、全部嘘だよ……」


 うつむいて顔を赤くする夏菜子。やっぱり、よくない噂を広げられてしまった。

 
 クラスの中でも友人が多い彩のことだ。

 自分の良くのために友人を使ったのだろう。