「ここの接続詞がよくわかんない」


 夏菜子が教科書の一文を指さす。


 「I go ( ) the second floor」 わたしは二階へ向かいます。カッコ内の接続詞を答えよ。


「これは『to』でしょ。ごーとぅー。」

「どうして『to』になるのか知りたいんだけど」


「それは……toだから。覚えるしかないね、だって俺も頭がいいわけじゃないからさ」



 そう言ってケタケタと笑う藍は、どさくさに紛れて夏菜子を抱きしめる。





「そんなに困ってる夏菜子もかわいい!」





「駄目駄目駄目! もう私に触りたいだけなの? あわよくば血を吸いたいの?」



「両方!」



 そう言って藍は真面目な顔をして夏菜子の顔を両手で添えて






「ねぇ……キスしてもいい?」

 




『ドキンっ……ドキンっ……ドキン……――』






改めてキスしていい? 

なんて聞かれたことがなかったため、夏菜子は必要以上に心臓の音が高鳴ってきた。



 これは、ただ動揺しているだけなのか、緊張しているだけなのか、それとも、このドキドキは……。

 藍に聞かれてしまっているかもしれない、そんな風に思うくらいの心臓の鼓動。




「否定しないってことは、OKってことでいいんだな」




 否定できない何かがもう、夏菜子の中には生まれてしまっていたようだ。