ーーーー……


その日は少し、羽衣がそわそわ浮きだっている日だった。



幼なじみを続けて、中学三年生のとき。



『……ねえ、涼』


『なに?』


『涼って、好きな人……いる?』



急な問いかけに、相当動揺したと思う。


そしてもう、自分の気持ちを言ってしまおうかと。



言わないで他の男に取られたら後悔するから。




『ーーーいるよ』



そう言ったとき、君はどんな表情をしていただろうか。


泣きそうに見えたのは、俺の気のせい?



『……あのさ、羽衣』


『ーーーっ…わ、たし…ごめんっ、用事思い出したから帰るね…!』



ーー好きだよ。



その言葉は、言えないまま空に浮いて終わった。



「……だめって、ことかな」