ーー……
その後の帰り道は、涼とたわいもない話をして私たちの家まですぐそこという距離に着いた。
もうすぐ、着いちゃう。……でも、
まだ、言えてない。お祭り、一緒に行こうって。
……少し緊張で震えた手で、涼の制服の裾を握った。
「……羽衣?」
「ーーあのねっ、涼、今年いっしょに夏祭り行かない……?」
「……え、夏祭りって、いつも行ってる……」
「うん。幼なじみだから、小さい頃から毎年いっしょに行ってるとこ。……いつも成り行きだから、たまには約束しとこうと思って」
……ちょっとうつむきがちに話したから、涼の顔は見えない。
幼なじみだし、毎年行ってるし……大丈夫、だよね…?
しばらく私たちの間に沈黙が流れた後。
隣からひとつ、すうっと息を吸う音が聞こえた。
「…ねえ羽衣」
「なあに?」
ーーいつもよりも堅い声だったのは、たぶん気のせい。
ーーいつもよりも話に絡んでくることが少なかったのは、たぶん気のせい。
ーそう思ったのが間違いだったのかもしれない。
オーケー、もらえるかな。大丈夫だよね、うん。
のんきに考えていた私は、このとき知らなかったんだ。
ーーそんな甘い考えは、次に続く言葉に簡単に打ち砕かれるなんて。
「ーー俺、羽衣と幼なじみやめる」
「うんうん!…………、え?」