「……あ、涼……っ!」



がた、と大きな音をたてて立ち上がった。


隣の涼のクラスのホームルームが終わったらしく、扉に背をもたれていて……今にも眠りそうな雰囲気。


そんなふわふわとした涼の雰囲気とは逆に、私のクラスではわっと女の子たちの歓声が沸き上がる。



「やばい、立花くんだ……っ!」


「ほんと目の保養……」


「かっこ良すぎる~……」



話しかけたいとそわそわする子から、遠目から見つめてうっとりと拝む子まで幅広くいるけど、当の本人はさほど気にしてなさそう。



「ーーあっ、涼!ねえ今度私と遊ぼうよっ!」


「…………」



……あ、高橋さん…。


高橋さんは、私のクラス、いや学年でめちゃくちゃ可愛いって言われている女の子。


いつも、綺麗にくるっと巻かれたふわふわの髪と、ぱっちりとした大きい瞳、柔らかい雰囲気が天使みたいだって。



たたっ、と涼に駆け寄る姿が可愛くて、……ふたりがお似合いで、涼に話しかけようとしていた他の女の子たちは「高橋さんなら勝ち目ない……」といって一線引いた。


もちろん、私も。



ーーだけど、



「ねえっ、涼?」


「……」



全く涼は、聞く耳を持っていない。眠いのか、ただ単にめんどくさいのか……たぶん前者だと思うけど。


だけど高橋さんは、涼に腕をぎゅっと絡めてずっと話しかけている様子。


……絡められた、触れあっているふたりの姿に、胸が軋む音がした。



「いつも誘ってもオーケーしてくれないじゃん?たまにはいいでしょっ?」


「…………」



「ちょっと涼、ちゃんと聞いてーーー」



「ーー羽衣、早く帰ろ」




「ーー……え」