「……ねえねえ、浴衣、着ていきなよ」


「……だからまだ6月だって」



さっきもおんなじこと言った気がするんだけど……。


そんな彼女は目がもう本気だ。爛々としている。もう日葵の中では今は7月なのかも。



「いいじゃんっ!浴衣きたら立花くんだってイチコロだって!」


「なんで浴衣きたらイチコロなの……?」


「だって羽衣が可愛すぎるから!」



「ー……」



……かわいくなんて、ないもん。


こんな不器用で、ひねくれた女。誰が可愛いなんて思うの?



「君らふたり並ぶと超お似合いなんだよっ!?」



雰囲気が輝かしすぎて毎回入りづらいんだから、と言われても……。



私はおいておくとして、確かに涼はすっごくかっこいい。


神様が丁寧に作り上げた傑作といっても過言じゃないくらい。


透き通った肌、ふわりとしたサラサラの髪、おまけに背も高くて、勝とうとはしていないけど、勝ち目が一つもない。


……しかも、常に省エネ無気力マイペースっていうところが女の子たちの乙女心をつ掴んでいるらしく、涼はめちゃくちゃモテる。


私はそんな女の子たちから“ただの幼なじみ”としか認識されていないから、幸い被害はないんだけど、なんだかそれも傷つく。