(じゅん)、いい加減突っかかってくるのを止めろ。迷惑だ」
「俺だって、あんたがもっと《Luna》のトップらしくしてりゃあ何も言わねぇよ!」

 冷たく言い放った銀髪の男に、潤と呼ばれた茶髪の男はまた怒鳴る。
 変わらない潤さんの様子に、銀髪の男がため息を吐いた。

「俺なりに責任を持ってやっている。お前の理想を押し付けるな」
「じゃあヴァンパイアらしく力で俺をねじ伏せてみろよ!」

 もはや何を言われても怒ってしまうのか。
 潤さんは激高して闘おうとするように構えた。
 そしてその手の爪が、鋭く伸びる。

「っ!」

 人間ではない証にヒュッと息をのんだ。

 人間の生き血を飲むヴァンパイア。
 その身体能力は人間離れしていて、催眠術と共にヴァンパイアの特殊能力として挙げられている。

 知ってはいたけれど、あんな風に爪の形も変えられるんだ……。

 息を詰めて緊張に耐える。
 早く立ち去って欲しいと今でも思うけれど、それ以上に見つからないようにしないと、という思いが強くなっていた。

 見つかったらただでは済まされないんじゃないかって思えてしまったから。