***

 そして昼食後、トイレに行くふりをしてイベント参加者たちの集団から離れることができた。
 私は当てずっぽうに探しても時間切れになるだけと判断して、悟志が一番いそうな一年の教室のある方へと向かう。

 悟志が何の連絡もなくいなくなるなんて、やっぱりどう考えてもあり得ない。
 だとしたら考えられる状況は二つ。
 強引に連れ去られたか、ヴァンパイアが使えるという催眠術で操られたかだ。

 ヴァンパイア側も共生を望んでいる以上人間と表立って敵対したくはないはず。
 だから、悟志は後者の状況の可能性が高い。

 催眠術で操られているなら、学園の中では普通に学生生活を送ってるんだと思う。
 そう判断しての行動だった。

 交流イベントの時間内で見つけられるかなんて分からない。
 でも、本当に悟志がいるかどうかの情報だけでも掴めたらと思う。
 いると分かれば、学園側に要求して会えるはずだから。


「……えっと、確かこの特別寮を通り抜ければ近かったはず」

 私はさっきの案内で聞いたことを思い出しながら早足で歩いた。

 特別寮はヴァンパイアの中でもトップに君臨する純血種の居住区で、一般のヴァンパイアですら近づくことは許されないらしい。
 だから間違っても近づいたらダメだと説明された。