見上げて見えたのは、涼しげなアメシストを思わせる紫の瞳。
 全ての整ったパーツが完璧に配置された顔立ち。
 滑らかな肌を覆うのは、シャラリと綺麗な音が鳴りそうな銀糸の髪だ。

「っ!」

 何度見ても息をのむ極上の美しさに、私は抗議しようとしていた言葉を呑み込んでしまった。


「なっ⁉ あんた、《Luna(ルーナ)》の……」

 私に迫っていた男子がこの極上の男を見てたじろぐ。

 《Luna》?
 ああ、そういえばこの人がいる特別クラスがそう呼ばれているんだっけ。

 この学園に転入が決まってから教えられた諸々の中にそんな情報があった。

 確か、ヴァンパイアの上位種である純血種だけが集められたクラスだとか……。


「おい、お前」
「ひっ! は、はい!」

 軽く脅すような低い声音。
 呼ばれた男子はあからさまに怯えて直立不動になった。

「こいつはお前らのような一般のヴァンパイアが触れていい女じゃない」

 話しながら、私の腕を掴んでいた手が移動する。
 頬を撫で、ロングボブの黒髪を払う。
 そして、あらわになった首筋に唇が寄せられた。

「っ!」

 そこに与えられた痛みを思い出し、思わず身を硬くする。
 でも、今回は近づいただけで止まった。

 そして、吐息と共に彼は告げる。


「こいつは……俺たちが求める極上の女だ」