——もしかしたら、もう家についてるのかも。


由里は傘を差し、だいぶ雨脚が弱まってきた中を歩いて部屋まで戻った。


しかし、部屋に戻っても、アキラの姿はなかった。


「どこに行ったのよ…。」


電気の点いていない暗がりの中、由里は声を殺して泣いた。


「会いたいよ、アキラ君…。」


ようやく気付いた、アキラへの気持ち。


でも、もう遅かった。


その日の夜も、その次の夜も、アキラは由里の部屋に帰ってこなかった。


由里はそれから毎晩、家に帰り着いて照明の点いていない部屋を眺めては落ち込んだ。


——やっぱり、私はただの客だったのかな。あの時のアキラ君の言葉は嘘だったのかな。吸血させてくれる、もっといい女の人を見つけたのかな。


アキラと出逢った日も雨だった。


そして、別れる時も雨。


由里は雨が降る度にアキラのことを思い出しては、時折涙を流して過ごした。