「メロスはやっ」

「でも太陽の10倍で走ったらしいから、それよりも速いと思うよ。あながち間違いではないね」

「俺すげぇ!」

「メロスがすごいんだよ」



まさか、倫太郎くんが2人の話すきっかけになってくれるなんて思いもしなかった。


倫太郎くん、ナイスだよ!


倫太郎くんに向かって親指を立てグーサインを出すと、何もわかっていないくせに釣られてグーサインで返してくれた。


この日をきっかけに、紗良の中で千崎くんの存在が少しずつ大きく強くなっていってくれたらなぁ。

……と思っていたが、現実はそう甘くはなかった。


結局あの日は、グループディスカッションという小さな輪の中で、更に倫太郎くんが居てくれたおかげで、2人が談笑し合えただけで、次の日はまたゼロから戻っていた。


ふと、考える。
恋のキューピットってこんなに難しかったっけ……?


いや!不安に駆られてる暇はない、次だ次!