「私たちって、仕事が結婚の足かせになっちゃうじゃないですか。勤務は不規則だし、数年で日本全国どこでも飛ばされるし、それを理解してくれる相手を見つけるのって難しいから」

 私たち情報官は国土交通省航空局の職員であり国家公務員なので、異動は当たり前にある。管制官と同様に多忙ですれ違い生活になってしまうし、なかなか結婚できないという話はよく聞く。

 でも、難しいからこそ憧れるのだ。毎日とはいかなくとも旦那様と一緒にご飯を食べて、休日はデートをして、愛する人との子供を産む。そういう、普通の幸せが続く結婚生活に。

 私の両親はとても仲がよく、ふたりに愛情を注がれて育った私も順風満帆な人生を送ってきた。いつか自分も両親のように幸せな家庭を作りたいと、幼い頃から願っているのだ。

 しかし、バツイチのゴンさんはもう結婚は諦めているらしい。

「まあな。最初は燃え上がって一緒になっても、後からやっぱり〝思ってたんと違う!〟って言われるんだよ。俺は経験者だからな」

 腕を組んで自信たっぷりに頷く彼に、離婚経験は胸を張ることではないと思いますが……と心の中でツッコんで苦笑いする私。