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 幼い頃から、私にとって空港はとても身近な場所だった。航空ファンの父が、長野県松本市にある信州まつもと空港の近くで居酒屋を経営していて、空港にも頻繁に遊びに行っていたからだ。

 空港周辺はかなりの広さの広場になっていて、アスレチックで遊びながら滑走路の近くで飛び立つ飛行機を見られる。私はあの轟音を恐れることもなく、保育園の頃から喜んで眺めていたらしい。

 父の影響もあって当たり前のように飛行機が好きになっていた私は、中学二年生のある日、管制塔の中を見学できるイベントに参加した。それが自分の大きなターニングポイントとなるとは知らずに。

 大きな空港では航空管制官が無線でパイロットとやり取りをするが、松本空港には管制官がおらず、代わりに航空管制運航情報官が交信を行っている。

 情報官は管制官とは違って許可が出せないため、風や他機の状況を逐一伝えることで補助をし、離陸と着陸はパイロット自身の判断に任せるのだ。航空機の離発着が比較的少ないところではこういった方法が取られていて、レディオ空港と呼ばれている。