しかし、気になったのは私だけらしく、ゴンさんたちが普通に話し始めるとすぐに相良さんの様子も元に戻っていた。

 気のせいかな、と自己完結して私もビールに口をつける。航空関係者ならではの話で盛り上がるにつれて、お酒もすいすい進んでいった。

 一時間ほど経った頃、空いた食器を下げに来た母が、ものすごくフレンドリーに相良さんに声をかける。

「ねえねえ、相良くんってパイロットなんですって? ぜひ莉真をお嫁にもらってやってくれないかしらー」
「っ、はぁ!?」
「ああ、パイロットなら誰でも大歓迎だ」
「それでいいの!?」

 母に続いて父も乗り気になっているので、私は焦りつつツッコみまくる。ふたりとも、私に男っ気がないからって勝手なことを……!

 お酒が回って顔を赤らめているゴンさんも、にやにやして相良さんを見やる。

「言われてるぞ、相良」
「いいんです、聞き流してください」

 すかさず皆の声を追い払うようにしっしっと手を振ると、相良さんがおかしそうに笑った。お酒が強いのか見た目は全然変わっていないが、すっかり打ち解けて心を許したような笑顔を見せている。