「親父さんすげぇよな。フィギュアもこんなに集めて。これとかプレミアもんだぞ」
「ガチ勢っすよね」

 ゴンさんが出窓に飾られた機体を指差して言い、遠野くんもまじまじと見ていた。

 相良さんはビールのグラスに手を伸ばしつつ、穏やかな表情で頷く。

「なるほどね。だから君も〝莉真〟なのか」
「その通りです」
「いい名前だ」

 私の名前もLを表すフォネティックコードの〝リマ〟から取っている。が、なんだか名前を呼び捨てにされたような気がしたのと、彼の落ち着いた笑みにドキッとしてしまったのは秘密だ。

 相良さんの下の名前は、確か暁月だったよね。それも空に関係しているけれど、どんな思いが込められているんだろう。

「相良さんのご両親も、空が好きだったりしますか? 〝暁月〟って〝明け方の月〟っていう意味ですよね」

 なにげなく聞いてみると、ごくりとビールを飲んだ彼が一瞬動きを止めた。不思議に思い、小首をかしげて彼を見つめる。

「……ん、まあそんなところかな」

 グラスを置いて答える彼は、口角は少し上がっているものの伏し目がちな瞳には冷たさを感じる。あまり話したくなさそうに見えるし、もしかしてタブーだっただろうか。