「今日はプライベートでこっちに来るって言うから、じゃあ機長昇格祝いでもしてやろうかと思ってさ。昼間はスノボしてたんだろ?」
「ええ。連休なんで久々の息抜きに、松本に住んでる友人と。そいつが夜都合が悪くなったって話をしたら、ゴンさんが誘ってくれて」

 相良さんってスノボもできるんだ。それすらもイケメン偏差値を上げるな……。機長になって一、二年は忙しいと聞くけれど、ちゃんと仕事とプライベートのメリハリをつけているっぽいし尊敬する。

 遠野くんが「すげー、雪の上でも飛べるってことっすか!」とうまいのかどうなのか微妙な返しをして、ゴンさんも笑って言う。

「せっかくだから皆で一緒に飯食いに行くのもアリだな」
「いいですね。俺は構わないですよ」

 思わぬ方向に進む話にぴくりと反応を示すと、ゴンさんが私たちに問いかける。

「お前らどうする?」
「「行きます!」」

 遠野くんと声を揃えて迷わず答えた。相良さんと一緒に食事ができる機会なんて、最初で最後かもしれないもの。パイロットの話をいろいろ聞いてみたい。

「よーし。じゃさっそく行こう。いざ〝シエラ〟へ!」
「ちょっ!?」

 わくわくしていたのもつかの間、ゴンさんが口にした店名に引っかかってしまった。