──その祈りが功を奏したのかはわからないが、相良暁月さんが最年少で機長になったという噂が届いたのは、盆地特有の暑い夏と、一日の寒暖差が激しい秋が過ぎた頃だった。

 それからあっという間に新年を迎え、周りの山々は白く雪化粧をしている。

 お正月気分が抜けた一月後半の今日は、夕方になって雪がちらちらと舞い始めた。航空機に影響はなかったが、予報ではまだ雪が続くようなので明日の朝が心配だ。

 管制業務を終えた後、暗い夜空から白い結晶がはらはらと落ちてくるのを事務所の窓から眺めて呟く。

「明日、積もらないといいけど」
「ですね。早朝のランウェイチェックから雪掻きは嫌だなー」

 隣にいた遠野くんも外に目をやってぼやいた。彼らが毎朝行っているランウェイチェックという滑走路の確認も、雪が降った日は確かに大変だ。

 私たちの間に、帰り支度を整えたゴンさんも入ってくる。

「そこまでひどくはならないと思うがな。つーか、遠野はそれが仕事だろうが」
「俺、コタツと大親友なんで離れたくなくて……」
「若者がなに言ってやがる」

 ふたりのいつもの調子に笑いつつ、私もバッグを手にする。遠野くんも帰れるようなので、まだ残っている職員に挨拶をして三人で一緒に事務所を出た。