また見入ってしまいそうになる自分が、なんだか不真面目な気がして視線を下げると、〝相良 暁月〟と書かれたネームプレートが目に入った。

 彼も、私と同様に名前を覚えたらしい。

「降旗さんはやっぱり思いやりがある人なんだな」

 突然そんな風に言われ、「え?」と声が裏返った。まるで以前から私を知っていたみたいな言い方に、ぽかんとしてしまう。

「無線を聞いている時から素敵な人だと思っていたんだ。いつも一緒に飛んでいるような感覚になる情報官は、あなただけだから」

 思わぬ言葉にドキリと心臓が鳴り、目を丸くした。

 情報官は日本全国に大勢いるのに、こうして会う前から私の声を覚えていたっていうの? しかも素敵だなんて、一体なぜ……。

「天候や他機の情報を、すごく的確に教えてくれるでしょう。パイロットの気持ちをよくわかっているなって感心していた。俺も操縦を任せてもらう時があって、松本空港は進入経路が特殊だからアプローチは少し緊張するんだけど、あなたの声を聞くと安心できる」

 魅惑的な瞳にまっすぐ見つめてそう言われ、胸の奥が急に騒がしくなり始める。嫌なざわめきじゃなく、高揚している。