かく言う私も目が離せなくなっていたものの、遠野くんが「じゃ、仕事戻ります」と告げたので笑顔で彼を見送った。私も事務所へ行こうと足を踏み出した時、こちらに向かってくるパイロットふたりの会話が聞こえてくる。

「まだ少し時間あるから、コーヒーでも飲んでいくか」
「そうですね。俺が買っていきますから、先に戻っていてください」
「悪いな。ありがとう」

 機長が先に関係者だけが使う階段のほうへ向かい、コーパイの彼がこちらの売店に向かってきたかと思うと、六歳くらいの男の子が「パイロットさーん!」と駆け寄ってきた。ひとりだけじゃなく、後から双子らしき男の子と女の子もやってくる。

「あのぅ、どうやったらパイロットになれるんですかー?」
「ぎゅうにゅうのめばいい?」
「ねえ、ママがしゃしんとりたいってー」

 さすが子供にも大人気で、わらわらと周りを囲まれた。しかも同時に質問してくるので私は目をぱちくりさせるも、彼はおかしそうに噴き出して「待って待って」と皆を落ち着かせる。

 そして子供たちの目線に合わせてしゃがみ、穏やかに微笑んで話し始める。