HA1102便は順調に進入し、山に沿うように旋回して着陸態勢に入る。その前にもう一度滑走路と風の状況を伝えておく。

「HA1102. Runway18,runway is clear, wind 330 at 5.(ヒノモトエアー1102。滑走路18、着陸に支障はありません。風は330度から5ノットです)」
『Runway is clear, HA1102.(着陸に支障なし、ヒノモトエアー1102)』

 同じ内容が復唱され、あとは着陸を見守るのみ。

 滑走路の端からエメラルドグリーンの機体がゆっくり下りてきて、ほとんど揺れずにランディングギアが接地した。少しだけスモークを上げ、速度を落としながら比較的短めの滑走路を悠々と進んでいく。

 完璧な着地だ。離陸と着陸の様子は、毎日見ているのにまったく飽きない。

 ほっとしている間もなく、次の指示を出さなければいけない。

「HA1102, Taxi to spot 1.(ヒノモトエアー1102、駐機スポット一番へタキシングしてください)お疲れ様でした」

 パイロットを労うひと言をつけ加えるのは、自分の中で習慣になっている。今日も当たり前のように告げると、指示を復唱された後、穏やかな声色で『ありがとうございました』と返ってきた。