暑い日差しでじりじりと焼けるような滑走路では、普段より多くの飛行機が離発着している。夏の間は客足が多くなるので、期間限定で便が増えるのだ。

 それに加え、この空港ではドクターヘリや警察航空隊のヘリも出動するため、この時期は結構忙しない。ゴンさんと阿吽の呼吸で航空機をさばいていく。

 今も、夏空の向こうからナビゲーションライトが見えてきた。しばらくすると、爽やかなエメラルドグリーンの機体だと目視できる。

『Matsumoto radio,HA1102. 10 miles on Final.(こちらヒノモトエアー1102。最終進入コースの10マイル地点です)』

 あのエメラルドグリーンの機体、『ヒノモト航空』のチャーター機のパイロットから無線が入ってくる。ヒノモト航空は『日本アビエーション』と並ぶ二大航空会社で、客足が増える時期だけ臨時便を運航しているのだ。

 今無線のやり取りをしているパイロット、おそらく副操縦士の彼の声は以前にも聞いた覚えがある。なんとなく若そうな印象で、かついい声なんだよな……と思いながら応答した。

 もう一度滑走路を見下ろす。他機やヘリコプター、障害物もなく、動物もいない。風も弱いし、ベストコンディションだ。