それだけじゃなく、ふとした時にたわいのないメッセージが送られてくる。私はそっけなく返したりスルーしたりと、気がないことを匂わせているのだが、そのたび彼を思い出して胸が苦しくなってしまう。

 私が結婚したくてもできない理由は、職業柄だけではない。燃え上がった過去の恋で焼け焦げた心が今もそのままで、前に踏み出せていないのだ。

 茜にはすべて打ち明けているので、私の心情を察して仏頂面をしている。

「まだ連絡寄越してくるなんて、莉真にしたこと忘れてるのかな。無神経すぎる」
「いや……たぶん、ただ友達感覚で送ってるだけなんだと思う。天性の人たらしだし、マメだから記念日とかも覚えてて祝ってくれるんだよ。恋人や好きな人じゃなくても」

 そう、顔もよくノリもいいあの人はとにかくモテていた。男女問わず慕われる人当たりのよさも、仕事になるとガラッと雰囲気が変わって真剣になるギャップも魅力的だったと思う。

 だから女友達が多いのも当然だし、どうすれば相手が喜ぶのか、扱いも熟知しているのだ。私にメッセージが来るのもたいした意味はないはず。