魔王の剣は、今も私の喉元に向けられてはいるものの。

戦意を喪失したかのように、瞳をキョロキョロと泳がせていて……


この可愛い表情、どこかで見たことがあるような?


首を傾げた私は、「はっ!」っと目を見開いた。



昨日の放課後。

空き教室の前を通った時。

私は隠れて、祝福の拍手を送ったんだ。


『好きだ。俺と付き合って』


『嬉しい。私も大好きだよ』


カップル成立の瞬間を目の当たりにして、羨ましくなって。

パチパチパチって。



目の前にいる魔王も、告白した男子と同じくらい頬を赤く染めているし。

『花嫁』って言ってたし。



「もしかして魔王って……」


「なっ……、なんだよ」



照れを必死に隠すような慌てぶり。



間違いない。



この魔王は……