「エレン様は誰よりも素晴らしいお方だから。心から敬愛し、尊敬しているお方だから。皇帝の伴侶として――――いえ、皇帝そのものとして、是非ともこの世のトップに君臨していただきたいんです。だけど、エレン様自ら地位を欲されるとは思っていなかったし、それを得るための手段がわたしだなんて申し訳ないというか……もっと他に道があっただろうにって思ってしまうの。なんなら現皇家を滅ぼして、単独で皇帝に踊り立っていただいたほうがしっくりくるというか、わたし的には良いと思うぐらいで。少なくとも、エレン様の妻がわたしっていう状況は受け入れられないというか……」


 ファンの立場から『なんか違う』って言うのはおこがましいってわかってる。だけど、エレン様にはエレン様に相応しいあり方ってものがあるとわたしは思う。
 だから、エレン様がわたしと結婚するのは絶対におかしい。とてつもない解釈違いだ。
 彼の隣に並び立つのはやっぱりもっと素敵な女性であってほしい。そうじゃないと認められないもの。


「ヴィヴィアン様は――――俺のことが嫌いなのでしょうか?」

「嫌い⁉ そんなまさか! 絶対にありえない! というか、この部屋を見たあとなのに本気でそんなことを言えます? 思ってます?」

「いいえ、全く」


 エレン様はそう言って、困ったように微笑んだ。