「ひとまずお茶をいれるから待っていてくれる?」

「もちろん。それにしても、ヴィヴィアン様自らお茶をいれてくださるのですか? 嬉しいです。皇女様でもお茶をいれられるものなのですね」

「え? っと、そうね。わたしってかなり凝り性で、お茶をいれるのも好きだったりして……色々再現したいものとか、こだわりとかあったりするから」


 エレン様の仰るとおり、皇女は普通、自らお茶をいれたりしない。だけどわたしは目的のためなら手段を選ばない女だ。
 お茶をいれる技術だってエレン様を崇め、彼の存在を感じ、推しまくるために必要だったから磨きあげた。本当に好きでやっていることなのだ。


「あっ……だけど」

「どうされました?」

「今夜は紅茶しか準備がないんです。エレン様が好きなのはカプチーノなのに……」


 急なことだったから、エレン様をお迎えするための準備時間が十分に取れなかった。
 本当なら、ならエレン様が一番好きなものをお出ししたい。たとえこれから婚約をなかったことにするのだとしても、大事な大事な彼の時間をいただくんだもの。少しでも喜んでほしいし、楽しんでほしいんだもの。