「いらっしゃいませ!」


 だけど、振り返り、歓迎の挨拶をしたのも束の間、わたしは思わず固まってしまった。


「こんにちは、リリアン」

「エレン様⁉」


 なんで? どうしてこのタイミングでエレン様が店に来るの?
 いや、元々わたしがシフトに入る日は、結構な頻度で来店してくださっていたけど、今は魔術師団の勤務時間中でしょう? だからこそ、安心してここに来たっていうのに……。


「実は少し疲れていて……短時間、休暇をもらったんだ」


 まるでわたしの疑問に答えるみたいに、エレン様が口にする。
 

(そっか。休暇か)


 なるほど。そういうこともあるよね。
 エレン様は真面目でいつも働き詰めだし、ぜひぜひのんびりしてもらいたいところではあるのだけど、疲れていて、という部分が心配すぎる。わたし的には超緊急事態だ。


「こんなところにいらっしゃって大丈夫なんですか? 疲れているなら、ご自宅で横になられたほうがいいのでは? わたし、エレン様が心配で……ここじゃ看病もしてもらえない上、大して栄養のあるものもお出しできませんし」


 推しはじめてから今日まで、エレン様が体調を崩されたって話は聞いたことがなかった。胸が痛い。嫌だ。エレン様が苦しむなんて絶対嫌だ。本気で、ものすごく心配だ。
 あとでヨハナに頼んで、栄養のあるものや安眠枕、ブランケットやアロマキャンドルをお届けしなきゃ。それから、皇室専門医を派遣して、それから、それから――――