…………もしかして、僕……異世界転生でもしたのか……?確信は持てないけど。

「ほら、クラル。帰るぞ」

そう言って、クラルさんのお父さんは片方の手をクラルさんに差し出した。その手を、クラルさんは握る。そして、僕は手を引かれて歩き始めた。

「君、家がどこにあるのか分かる?」

クラルさんの問いかけに、僕は素直に「分かりません」と答える。

「ねぇ、父様?この子……僕の家に住まわせてあげない?いつか、思い出すかも!」

クラルさんのお父さんは、ため息をつく。

「…………君のその服に描かれた紋章……それは、クロウディア家のものだ。クロウディア家には、変な風習があって……その風習のせいで、君は捨てられた可能性が高い……まだ決まったわけじゃないけど、この子をうちで預かった方が良さそうだ」

……変な風習?

それを疑問に思ったけど、僕はあえて聞かなかった。聞いてはいけない気がした。

腕を引かれてしばらく森を歩いていると、高い塀で囲まれた建物が見える。

「リル~!!」

クラルさんは、大きな門の前で槍を片手に持ちながら立っている黒髪に赤い目の男性に走って近づくと抱きついた。

「おやおや。クラル様ではありませんか……またクロード様の言いつけを破って、1人でお出かけになられたのですね?」