僕が、クラル様の側近になって数週間が経った。側近になってからも、僕の生活にあまり変化はない。

クラル様に用事があって、僕はクラル様の自室に向かう。

クラル様の自室のドアをノックすると、中から「どうぞ」という声が聞こえてきて、僕は「失礼します」とクラル様の自室に入った。

机と向かい合うように座っていたクラル様は、僕の方を見ると「どうしたの?」と微笑む。

「クラル様、少し町に行きたいのですが……よろしいですか?」

僕が問いかけると、クラル様は「良いよ……丁度良かった。ルーチェに、頼みたいことがあるんだけど……」と机の上に散らばってる紙を集め始めた。

「この書類を、カラミティにある冒険者育成学校の校長先生に届けて欲しいんだ」

その紙を封筒に入れて、それを僕に差し出す。

「冒険者育成学校の校長先生はね、父様が魔王だったことを知ってて、父様は定期的に他の魔王の動向を校長先生に報告していたんだよ。その役割を、僕が担うことになったんだ」

クラル様の説明を聞いて、僕は「そうだったんですね」とクラル様から封筒を受け取った。

「ちょうど、今日が報告の日でさ。本当は、僕が行かないといけないんだけど……ちょっと、急用が出来てしまって……冒険者育成学校で、父様が待ってるから僕の代わりに行ってきてくれない?」