光った隙間を覗くと、壁に立てかけるように置かれた、僕が使ってる杖を見つけて、僕はそれを手に取る。

もう10年くらいは使ってる、杖型の呪具。手にした瞬間、杖に埋め込まれたひし形の紫色の魔法石が、光を放った。

その眩しさに、僕は思わず目を閉じる。

光が収まって、僕はゆっくりと目を開けた。さっきと変わらない景色が、僕の視界に入る。

「……ルーチェ、その服……」

後ろから声がして、僕は「え?」と声がした方へと振り返った。勢いよく振り返ったからか、バサり、と服が音を立てる。

和夢と旭は、目を見開いて僕を見つめてた。

「……!」

僕が確認をすると、僕はいつもの服を着てた。

『試練その1、クリアおめでとうございます。主人』

八咫烏の声が聞こえてきて、僕は声がした方を見る。いつの間にか開いてた窓から見えた姿を見て、僕は驚いた。

“僕の姿をした八咫烏”が、杖に座って空を飛んでる。

「……僕?」

風が吹いて、彼の肩辺りまで伸びた黒髪が揺れた。彼は、ふわりと優しく微笑む。

「人型になるのは、何十年ぶりでしょう。あの時以来なので、もう数百年は経つ……でしょうか?……さて、主人……ではなく、ルーチェ・クロウディア。あなたには、これから私の出す試練を受けてもらいます」