「……呪具の、化身……」

『……今一度問う。お前は、何故力を求める?』

「そんなの、要らない」

僕がそう返すと、暗闇から『笑わせてくれる』という声が聞こえた。

『お前は、心のどこかで力を求めている。違うか?だから、お前は呪具を手にした』

「…………家族を……皆を守れるだけの力が欲しいって思う時はあるよ……だけど、呪具を手にした理由はまた別だ!モンスターに、呪具を拾わせたらダメだって直感的にそう思ったからだよ」

『……ふっ。そうか。面白い……お前に、力を貸してやろう!』

その声を最後に、僕の意識は途切れた。



目を覚ますとクラルさんと目が合って、クラルさんは「良かった……」と安心したように笑う。

「父様!ルーチェ、起きた!」

クラルさんがそう言うと、「本当!?」という声がしてから、走る音が聞こえた。その音は、だんだんと大きくなる。

「ルーチェ!大丈夫?」

僕の顔を、父様が覗き込んだ。父様の肩には、1匹のカラスが止まっている。

僕は体を起こすと、周りを見渡した。さっきまでいたモンスターは、いない。

『やっと気が付きましたね。主人』

父様の肩から離れて、空を飛びながらカラスは僕に近づく。