「一目見たら分かった。ビオラくんは、いや……ビオラくんの持っていた呪具の力が暴走している。そんな状態で、今の俺らに勝てるわけないでしょ……挑んだって負けるだけだよ」

「……」

父様の握り拳には力が入ってて、表情も悔しげだ。父様は、本当はクラル様を助けたかったけど、助けられなかった自分を悔やんでる……ように見える。

「……」

「正直言うと、早くクラルを助けたいよ。でも、一旦作戦会議をする必要がありそうだ」

『それに、あの呪具に呪われた者は本当のことしか言いませんからね。これ以上、クラル様を傷つけないという言葉は信用してもいいでしょう』

いずなの言葉を聞いて、少しだけ気持ちが落ち着いた……ような気がした。

「……分かった。その前に、あの2人……どうします?ここから遠くにある村に住む子なんですが……」

僕がカナタさんとエリカさんの方を向きながら尋ねると、父様は「あの子たちも、一旦家に連れて帰ろうか」と答えた。

そして、父様は八咫烏に今の状況をレオンさんたちに伝えて来てもらうように指示を出す。八咫烏は、一言返事をするとどこかへと飛んでった。

僕は「分かりました」と返事をすると、カナタさんたちに近づく。

「カナタさん、エリカさん。僕らは、一旦家に戻るけど……君たちも来て。色々と聞きたいこともあるし」

僕が声をかけると、2人は顔を見合わせるとどこか気まずそうな顔で頷いた。