「……ビオラさん……」

「あ、僕のこと覚えててくれたんだ。嬉しいな」

そう言って、様子のおかしいビオラさんは光のない紫色の目を細めて笑う。そして、ビオラさんは「ねぇ、ルーチェ」とゆっくりと僕に近づいてきた。

……何だ？何かがおかしい。一体、何が起こってる……？

「……」

僕は背負ってた杖を構えて、戦闘体制になる。

「あはは……大丈夫だよ。そんなに警戒、しなくて、もっ！」

地面を強く蹴って、ビオラさんは跳び上がった。木々の隙間から差し込む太陽の光が、ビオラさんの持つ剣を一際輝かせる。

そして、ビオラさんは剣を振りかぶって僕に向かってーー。

僕の目の前に、誰かが僕に背を向けた状態で立つ。剣と剣がぶつかり合う音がした。僕の前に立ってるのは、クラル様だ。

「間に合った……」

「……クラル様……」

「どうして……どうして、君がルーチェに攻撃をする！？君は、ルーチェの実の兄なんでしょ！？」

「あぁ、うん。そうだね……ルーチェは僕の弟だ。でも、ルシフェル様からの命令なんだよね。ルーチェを、消してこいってね」

そう言いながらビオラさんは飛び退いたのか、声が少し小さくなる。

……ルシフェル様って、誰だ？

「……だから、そこを退いてよ。クラルさん」

「ルーチェを消したいから退け、だって？退かないよ、僕は」

「……んー……じゃあ、こうしよう。僕は、ルーチェに手を出さない。その代わり、クラルさんには大魔王様に会ってほしいな～」