“ 恋 ”と聞いて、きらきらでふわふわで、ショートケーキの生クリームばかりを与えて貰えるような、そんな甘ったれた幻想を、確かに夢見ていた覚えがある。


✩.*˚


反転した、世界。

祭りのあとの静けさとはこの事か、靴箱はあたし以外誰一人とていない。

暗闇が広がり始めた校舎はまるで月面みたいで、世界にはあたしだけが取り残されたように感じられる。

終わり?それとも、この世界はまだ始まってもいないのか。

「(緊張してきた……!)」

刻一刻と流れる時間は止まってもくれない。刻むスピードを緩めてもくれない。

やがて来るであろうその時の為に深呼吸を繰り返す。
そうして脳内会議で何度も協議してきた内容を唱える。


未だかつて、こんなにも勝算のない告白があっただろうか。


否、あたしは“告白”の経験が著しく乏しいから、答えを見出すことは不可能だ。


けれども、この先の長い人生を予測してみたら、例え振られたとして、こんなにも清々しい告白はなかなか経験しないとあたしは思う。

だから良いの。振られても良い。


相沢ひな、一世一代の勝負に、いざ────!